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室井摩耶子 演奏の秘密 II 〜円熟の精華!

「レコード芸術」『 準特選盤 』に選ばれました!

CD番号 ZMM1111

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誌評

「レコード芸術」(2012年1月号)

濱田滋郎

<特> 以前にも室井摩耶子女史が“語り付き”でモーツァルトほかを演奏したディスクが出ていたが、このたびはベートーヴェンの《テンペスト》(《ソナタ》ニ短調作品31-2)およびシューマン《子供の情景》を取上げて演奏すると共に、あらかじめ「ピアニストはピアノをしていかに“語らせる”べきか」についてのトーク講話を置き、聴きてがピアノを、音楽を聴く耳をはぐくむようにと訓える。「お話をするピアノの音」というのが、講話のタイトルである。2010年10月11日、東京オペラシティ・リサイタルホールでのライヴ録音。と言うことは、女史は89歳でいらしたのだが、ピアノのかたわらにすっくと立たれたお姿(写真)と言い、凛として明快な声および語りくちと言い、驚くべき「若さ」を保たれている。トークには随時ピアノの実演が添えられるので理解しやすく、言われることはすべて真理をついて、ただちに頷かれる。しかも演奏に入ると、《テンペスト》と言い、《子供の情景》と言い、語られた内容がそっくりそのまま生かされていることに、感銘を新たにする。もとより、スケールが大きく頑丈な演奏ではないが、曲の性格も手伝って優しさのエキスが一杯に詰まった奏楽の趣がうれしい。疑いなく、心して聴く者に多くの幸をもたらしてくれるCDである。評価は普通の「推薦」ではなく_とすることをお許し頂きたい。芸術的良心をそなえたピアニストの象徴として、女史がこれからもお健やかに活動されることを心より祈る。

 

那須田務

<準> 室井摩耶子は今年で90歳になられた。現役のピアニストとしてはわが国どころか、世界中を見渡しても最長老といえるのではないだろうか。ここまでいくと、音を一つ奏でるだけで含蓄のある豊かな響きがでるし、お話しもし、毎年のようにトーク入りのリサイタルを行っている。音楽家に限らず一度巨匠と認められると、いつまでも若い頃の価値観に固執する人がいるが、室井氏はピリオド楽器に関連する話が出てくるなど、常に柔軟な姿勢と探究心で音楽と向かい合っている。まったく頭が下がる。今回のタイトルは『演奏の秘密』その2。前回のモーツァルトのソナタ イ長調《トルコ行進曲付き》とシューベルトの《即興曲》作品90の続編である。ベートーヴェンの《テンペスト》とシューマンの《子供の情景》を収録している。ブックレットのクレジットによれば、演奏は2010年10月11日に東京オペラシティのリサイタルホール。トークだけは室井邸における録音。「お話をするピアノの音」と題して、ピアノの音と人間の心理との関係についてピアノの実演を交えて語っている。演奏は前回に比べて綻びが少ない。御歳を考えれば奇跡に等しいのだが、私たちが耳傾けなければならないのは、むしろ室井氏が《テンペスト》や《子供の情景》においてピアノで語ろうとする内容だろう。《テンペスト》は緩徐楽章が、《子供の情景》は<重大なこと><トロイメライ>が味わい深い。

 

CDジャーナル(2012年1月号)

90歳である。室井はお話付きのコンサートを行っているが、ここでもまことにわかりやすく洞察力に富んだこの二つの作品の解説が冒頭に付く。各フレーズへの深い読みを支えるテクニックにもさして衰えが見られず、驚異的なほどである。日本にもこういうピアニストがいるのを嬉しく思う。

 

「音楽現代」2月号

萩谷由喜子

通算7枚目、トーク入りで5枚目となるライヴ・シリーズ。冒頭トラックは16分に及ぶ「テンペスト」の解説トーク、次は12分の「子どもの情景」の解説トーク。そのあとに各曲のライヴ録音本編。最大の聴きどころは、トーク・トラックから音楽の本質論を受け取ることができると同時にその作品の個論として具体的で有益な解説情報を得ることができ、さらに語り手本人によるその実践をライヴ録音トラックで耳にすることのできる点だ。トークは、ここまで「演奏の秘密」を語ってしまってもいいのかと心配になるほどピアニストの手のうちをさらけ出したもの。秘密を明かしてまでも聴き手に音楽を伝えんと願う摩耶子先生の到達点に打たれる。 


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