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ZMM1703 ・ゼール音楽事務所 
室井摩耶子/≪ハイドンは面白い!≫

2017年3月1日 発売
CD番号 ZMM0811  3,056円(税込) 

ハイドン:ソナタ 変ホ長調 Hob.X VI-49 [19:35]
ハイドン:ソナタ ハ長調 Hob.X VI-50 [18:45]
ハイドン:ソナタ 変ホ長調Hob.X VI-52 [17:48]

録音/Hob.X VI-49 2017年 1月17日 三鷹市芸術文化センター 風のホール
   Hob.X VI-50 2014年 2月25日 三鷹市芸術文化センター 風のホール
   Hob.X VI-52 2016年12月10日 東京文化会館小ホール(ライブ)

プロデューサー/志風 敦雄  録音ディレクター/寺元 宏  録音技師/林 正夫 
ピアノ調律/磯村 昇  写真/小島 由起夫  デザイン/山岸 健悦  ヘアメイク/橘 房図

録音制作/ゼール音楽事務所

○取り扱い店
ディスクユニオン各店 でお買い求め頂けます。

 

誌評

「レコード芸術」2017年5月号 特選盤

推薦

なんと95歳の現役ピアニストは、世界でも稀に違いない。当アルバムは2014年2月から、2017年1月までに行われた3つのリサイタルでのライブ・レコーディング。「お話」はなしの演奏だけになっているが、「ハイドンは面白い!」と題してハイドン後期の円熟したソナタ3篇(第49、50、52番)を奏でたもので、内容として申しぶんない。室井摩耶子女史は「近年、ハイドンがとても面白くなってきて、こんなに面白いものがあるのなら、もっと長生きして弾き続けねば」といったことをどこかで語られた、と読んだ憶えがある。このアルバムは、そのようにまで感じられている「面白さ」が、美しく実り多い楽興の連なりとなって溢れ出す姿を、聴きてが幸せに受け止めるべく世に送られた、掛値なしの宝物だと言えよう。この演奏を聴けば、古くから時に言われてきた「ハイドンのピアノ曲は、モーツァルト、ベートーヴェンのそれに比べ、楽興が平凡、インパクトも弱くて物足りない」といった風評が、じつは根拠を欠いた皮相なものでしかないことがよく分かる。ハイドンは、誰を真似るのでもなく、「ハイドンがハイドンであるが故の価値と魅力」を、しっかりと持っている。室井女史はそのことを深くわきまえ、急速楽章でも緩除楽章でも、たいそう木目こまかく作品の美質を顕わしていく。この部分、このフレーズはどのような音色、アーティキュレーションで、といった配慮が逐一生かされ、奥行きを生み出す。ぜひ、一聴をお奨めしたい。

濱田滋郎

 

推薦

昔ある歌舞伎役者だったか、こんなことを言っていた。役者は年齢や経験を加える知情意は成長し続けるが、残念ながら身体能力は落ちていく。その両者のピークが一致するところが一番いい。それは演奏家も同じだ。僭越ながら、この理を変えられる方法が一つあると思う。それは絶えず自己変革を続けると同時に、その時々の身体の状況に見合った技術を新たに開発習得していくことだ。たとえば、ホルショフスキーやプレスラーがそうだ。御年95歳の現役ピアニスト、室井摩耶子もそのような人なのだろう。絶えず新たな課題に取り組み、新しい発見に胸を躍らせている。今回はハイドンのソナタ。第49番と第50番は三鷹市芸術文化センター・風のホール、第52番は東京文化会館小ホールでのライヴ。ハイドンの音楽の面白さはいろいろあるが、室井氏も解説で書いておられるように、とりわけ目を引くのは同じ音型やリズムの繰り返しだ。それも執拗にやるから笑いを誘うが、アーティキュレーション等で微妙に変化を付ける。室井氏のタッチは程よく軽く、前述のプレスラーの演奏を想起させる。惜しいのはどの楽章もテンポは遅めで、曲によるテンポの差があまりないこと。その他はハイドンの音楽の特徴をしっかり押さえ、多彩なアーティキュレーションで語らせる。隣の鍵盤を触るところはあるし、第52番はミス・タッチも目立つが、トータルでハイドンの楽しみを伝えている。

那須田務

 

[録音評]

三鷹市芸術文化センターでの2014年2月25日と2017年1月17日、東京文化会館での2016年12月10日の3回の収録を編集・構成。オーソドックスな収録の安定感を感じさせる2014年、演奏に近めの2016年、先行2回の中間的傾向で少し2014年寄りの2017年という具合だが、3回の収録の共通項は温かい響き伴うステージ的リアリティ。演奏時期も近く、よく整っている。

神崎一雄


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