2005年10月8日

“生涯現役ピアニスト”

室井摩耶子トーク・コンサート

ポスター   (←クリックして下さい)

会場:白寿ホール ( Hakuju Hall )

後援: (株)河合楽器製作所

協賛:Hakuju Hall / 株式会社 白寿生科学研究所

マネジメント:カワイ音楽振興会 Tel 03-3320-1671

   

 

プログラムノート 演奏会を前にして 2005年10月8日 室井摩耶子

 


10月8日トーク・コンサート

鑑賞者アンケートより

 

「今日の演奏を聴いて、室井摩耶子さんの人生、彼女の一歩一歩が、本当に見えるコンサートでした! 私も頑張らなくては!!」 埼玉県 20代 女性

 

「室井摩耶子先生は音を媒体にして“天の声”を伝える伝道者、聖人であると思います。」東京都 40代 男性

 

「シューベルトのソナタの力強さと迫力はすごい。室井さんの迫力と若さもすばらしかったです。ありがとうございました。」 茨城県 50代 男性

 

「力強い演奏、そしてこまやかなタッチ、にこやかな笑顔、感激しました。益々おすこやかにお過ごしくださいませ。」 埼玉県 80代 女性

 

「お話(解説)が良い。言葉(日本語)、語りが美しい。近時の日本語の乱れた若い輩に聞かせたい。…素人なので音楽学的には評せないが、ベートヴェン、シューベルトの音楽の心を伝えていると体感する。Brava! 年齢は御本人も言うように全く関係ない。キャリアを積んだ音楽がそこにある。」 神奈川県 70代 男性

 

「元気と勇気をちょうだいできるコンサートとお話でした。ベートーヴェンの他の曲も聴きたいと思いました。8時間の練習はすごい!! ありがとうございました。」 東京都 50代 女性

 

「昔の日比谷公会堂を思い出しました。『84歳にして新スタート』という音色を拝聴しました。もうこういう定冠詞がついてしまったのは消えないでしょう。しかし、戦前から時代とともに、ホールの変遷とともに室井女史の中味が深まるのだから、ただの『高齢者で何かやってる人』とは全く別。よかったですよ。今日は特別にイキイキしてました。」 静岡県 70代 女性

 

「お元気でますますのご活躍を祈っております。トークもいつも面白いです。楽しみのひとつです。」 東京都 60代 女性

 

「感動いたしました。お年を召していられるのに、体力と気力に驚きました。これからもお元気でご活躍のほどを。」 東京都 80代 女性

 

「力強く心にしみる演奏でした。益々頑張って下さい。」 東京都 50代 女性


室井摩耶子トーク・コンサート 2005年10月8日 白寿ホール ( Hakuju Hall )

音楽誌の演奏評

 

● 壮大なスケール、荘厳な演奏

“壮大なスケール”である。それは、シューベルトの最後のソナタのことを指した室井摩耶子の言葉であるが、室井の演奏も実に大らか。この“絵巻物”のような大曲、変ロ長調D.960に対峙して、円熟のピアニスト、室井はいよいよ雄弁に語りだす。その迫力と、滑らかな歌や音色の多彩な変化は、100人もの奏者を擁する大オーケストラをも想わせる。そう、室井の演奏はピアノを弾くという行為をとっくに超越して、彼女はシューベルトのこの思慮深い音楽の真の具現者となっていた。子守唄のような第2楽章では、昔話を聞いているような温かさや懐かしさを感じた。その再現部中程に現れる、ハ長調の光に溢れた美しい響きは、今も忘れられない。第3楽章スケルツォでは、まばゆい輝きがホールを満たす。終楽章では目の前に広野が広がるよう。時折見せるシューベルトの色気や、意表をつく転調による憂いも、室井は巧みに表現する。

 さて、室井を虜にするもう一人の作曲家はベートーヴェン。ソナタ《月光》について「センチメンタルな軽い音楽ではない。死を想わせる奥深い音楽」と演奏の前に室井が語ったように、どの楽章も骨太の骨格を意識した荘厳な演奏であった。 

「ムジカノーヴァ」2006年1月号  野平多美

 

 

● ソナタの真髄を克明に語る圧巻

楽曲を演奏して聴かせるだけでなく、その作品にまつわる作曲家や曲目について、演奏する前に語り、曲の実像を理解させようという、室井摩耶子が発想した『トーク・コンサート』も今回で17回を数える。

 当日はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第14番「月光」を最初に取り上げる。演奏前に、この曲の愛称はベートーヴェンが名づけたのではなく、これにとらわれると曲の本質を誤認する、という主旨の説明があった。演奏は格調を保ち、単にロマンティックな情緒に浸ることなく曲を進める。とりわけ終楽章での充実感溢れる表現は、このソナタの真髄を克明に語る圧巻。

 次がシューベルトのソナタD.960「遺作」。楽譜に書かれた演奏上の細かい指示を綿密に把握、旋律の美しさを発揮することが大切である、と述べた後に演奏。長大なこのソナタを詩情豊かに、流動感のある変化を顕示、楽章を追うに従い統一性のある盛り上がりをみせる。

「音楽現代」2005年12月号  飯野 尹

 

 

● 濃い内容、深みのある音色。他では絶対聴けないコンサート

 堂々のソナタ2曲! それもベートーヴェン『月光』とシューベルト遺作・変ロ長調。ふたりの作曲家の異なる音楽世界にひたと対峙して、前半後半1曲ずつ、それだけで聴き応えたっぷりの2時間。いずれも、作品との関わりや積年の思いについて温かな語り口のトークがまずあって、しかるのちに一音一音彫りつけるようにして奏される。内容は実に濃い。深みのある音色、聴き手に思いをめぐらす時間を与える悠久のテンポ。とはいえ、もちろん『月光』は楽章を追うごとに確実にテンポを速めていき、フィナーレでは疾走感のある音の饗宴が……。

 シューベルトはピアニストの人間性のすべてが曝け出されてしまう、とてつもない大曲だ。この曲をだれずに、聴き手を牽引しながら弾き通すには技術がいくらあっても駄目なのだ。でも、室井摩耶子先生の内から滲み出る音楽の大きさ、深さはいつしか聴衆全員をあたかも自分が弾いているような擬似体験気分にさせてしまう。弾き手も聴き手も命がけでシューベルトと向き合い、手に汗握り、ついにフィナーレのコーダを終えたとき、ともに大きな達成感を味わった。こんなコンサートは他では絶対に聴けない。84歳、室井摩耶子先生、ありがとうございました!

「ショパン」2005年12月号 萩谷由喜子

 

 
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